大判例

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京都地方裁判所 平成5年(行ウ)5号 判決

原告

西山夘三(X)

(ほか六〇四名)

右全員訴訟代理人弁護士

飯田昭

右同

大脇美保

右同

籠橋隆明

右同

中島晃

被告

京都市(Y)

右代表者市長

田邊朋之

右訴訟代理人弁護士

崎間昌一郎

事実及び理由

第三 争点1(本案前の主張)に対する判断

二 本件特定街区決定について

〔中略〕したがって、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生じさせるものであることは否定できない。しかし、その効果は、市街地の整備改善を図るために、その街区内における建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限について一般的基準を定立するものにすぎない(都市計画法九条一二項)。これはあたかも新たに右のような制約を課す法令が制定された場合と同様、当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的な効果にすぎないものである。このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったとはいえないから、抗告訴訟の対象となる行政処分とはいえず、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない(最判昭和五七・四・二二民集三六巻四号七〇五頁参照)。

もっとも、右のような法状態の変動に伴い、将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。建築基準法による確認の拒否処分等の右建築を阻止する行政庁の具体的処分によって具体的な権利侵害が生じた時点で、特定街区の指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の途が残されると解せられるから、前示のような解釈をとっても原告ら主張のような不都合は生じない。

三 本件都市計画道路変更決定の処分性

本件都市計画道路変更決定は、都市計画法一一条一項一号に基づき都市計画決定の一つとされる。右都市計画決定は、前示のとおり都市計画事業の認可と施行という後続の手続きが予定されているものであり、都市計画事業に関する一連の手続きの一環をなすものといえる。都市計画そのものは、道路の位置、区域などの極めて基本的事項のみを高度の行政的、技術的裁量によって一般的に決定するものである。右決定が告示されて効力を生じると、都市計画法五三条の建築規制を受けるなど、右決定に伴い、法の定めにしたがって当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約が生じ、その限度で一定の法状態の変動をもたらすことは否定できない。しかし、右規制は、都市計画事業の円滑な遂行に対する障害を除去する必要に基づき、法律がとくに付与した都市計画決定に伴う付随的な効果にとどまり、都市計画決定自体の定めた効果として発生する権利制限とはいえない。したがって、右都市計画決定は、特定の個人に向けられた具体的処分ではなく、都市施設の区域内の土地所有者等の権利に対し、具体的変動を与える処分ではない。よって、本件都市計画道路変更決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分とはいえない(最判昭和六二・九・二二裁判集民事一五一号六九五頁参照)。このように都市計画道路変更決定の段階で訴えの提起が許されないとしても、都市計画法五三条に基づく建築許可申請に対する処分がなされ、あるいは手続の進展に伴って都市計画法八一条に基づく建築物等の移転または除却命令、土地収用に関する処分等の具体的処分がなされ、これらによって権利侵害が生じた時点で、右具体的処分の取消等を求めることによって、権利侵害に対する救済の途は残されているから、右のような解釈をとっても格別の不都合は生じない。

四 本件土地区画整理事業決定の処分性

本件土地区画整理事業についての決定は、都市計画法一二条二項に基づき、都市計画決定の一つとされるものである。右都市計画決定は、都市計画事業の認可と施行という後続の手続きが予定されているものであり、都市計画事業に関する一連の手続きの一環をなすものであって、右都市計画は、長期的見通しのもとに、健全な市街地の造成を目的とする高度の行政的、技術的裁量によって一般的、抽象的な決定をするものである。したがって、右都市計画決定自体ではその遂行によって利害関係者の権利にどのような変動を及ぼすかが、必ずしも具体的に確定されているわけではない。右決定が告示されて効力を生じると、爾後、施行地区内において宅地、建物等を所有する者は、土地の形質の変更、建物等の新築、改築、増築等につき一定の制限を受けることになっている(土地区画整理法七六条一項参照)。しかし、これは、当該都市計画の円滑な遂行に対する障害を除去する必要に基づき、法律が特に付与した公告に伴う付随的な効果にとどまるものであって、右都市計画の決定ないし公告自体の定めた効果として発生する権利制限とはいえない。したがって、右都市計画決定は、特定の個人に向けられた具体的処分ではない。よって、本件土地区画整理事業決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分とはいえない(最判昭和四一・二・二三民集二〇巻二号二七一頁、最判平成四・一〇・六判例時報一、四三九号一一六頁参照)。このように、土地区画整理事業についての都市計画決定の段階で訴えの提起が許されないとしても、前示都市計画道路変更決定の場合と同様、後続の具体的処分の段階で権利侵害に対する救済の途が残されていると解せられるから、右のような解釈をとっても格別の不都合は生じない。

五 原告らは、以上のほか種々の理由を挙げて、本件各都市計画決定には処分性があること、さらには本件各都市計画決定が行政訴訟の対象にならないと原告らの権利救済を図ることができない旨主張するが、いずれも独自の見解であり、採ることはできない。また、右のように解しても、憲法三二条に違反するものではない(最判昭和三五・一二・七民集一四巻一三号二九六四頁参照)。

(裁判長裁判官 吉川義春 裁判官 中村隆次 遠藤浩太郎)

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